診療報酬改定検証 「医療に必要な患者見極めを」

【高齢者の介護・医療ニュース】

 今回、高齢者住宅への訪問診療報酬が大幅に引き下げられた背景の一つとして考えられるのが昨年8月に一般紙で大きく報道された「患者紹介ビジネス」の封じ込めだ。しかし、それに診療報酬引き下げという方法を用いたのは疑問が残る。

 今回の報酬改定では療養病棟に対し、在宅復帰機能強化加算が新設されるなど「病院から施設へ、施設から自宅へ」の流れが打ち出されているだけに、高齢者施設への訪問診療報酬激減だけが、異質なものとなってしまっている。

 「在宅医療では自然と自宅住まいの高齢者、高齢者施設入居者の両方が患者となります。しかし実際には高齢者施設100%という在宅医もいます。こういう事例がある以上『高齢者施設向け医療は儲る』と思われても仕方が無いといえます」と秋田往診クリニック(秋田市)の市原利晃医師が語る様に、一部には行き過ぎた在宅医がいたのも事実だ。

 しかし、診療報酬減という方法を用いたことで、他の在宅医までもが影響を受けることになってしまったのは大きな問題だ。

 医療法人社団康明会(東京都日野市)遠藤正樹常務理事が語る。

 「真面目にやってきた施設向け在宅医まで一緒に減算というのは到底容認できない話です。医師紹介ビジネスによって、在宅医療を必要としない人にまで過剰に医療が提供されていたというならば、半年間かけて全在宅医療利用者の要介護度や病状などを確認して『本当に在宅医療を必要としているのか』を判断し、その上で不必要な人についての診療報酬を引き下げるべきです」

 地域包括ケアを推進する上で在宅と施設は両輪をなす存在だ。施設向けにコストをかけ24時間体制で対応できる体制を作ってきた在宅医療機関が果たしてきた役割は大きい。

 今回の報酬改定で、高齢者施設向け在宅医療が縮小するようなことになれば、その分外来受診が増えることになる。病院・診療所での外来受け入れ体制が強化されなければ、今よりもさらに待ち時間ばかり長くなって満足な診療を受けられない事態にもなりかねない。

 また、在宅医療機関が新報酬でも経営を行っていく場合には、非常勤スタッフや看護師の体制、医師の給与などについても見直しが必要になってくるだろう。

<不当な在宅医療にメス>

全国在宅療養支援診療所連絡会 太田秀樹事務局長
「老人ホームやサ付き住宅に在宅医療が入る場合、ひとつの医療機関が看るのは、通院困難な患者で普通ならせいぜい入居者の2〜3割程度。しかし実際には全入居者を診療するなど不自然な例が見受けられた。今回の診療報酬改定は、そうした不当な在宅医療にメスを入れるものとして仕方が無いものと考えている。ただし通院が難しい重度者への対応などについては、今後考慮されるかもしれない」

(3月5日号)高齢者住宅新聞