医療法人が「植物工場」 運営高齢者施設に野菜提供

【高齢者の介護・医療ニュース】

 NTTファシリティーズ(東京都港区)は「ユニット型植物工場」の医療・介護系事業所への導入を提案している。4月には青森県で医療・介護系事業所導入第1号となる植物工場がスタートする。

作業訓練などさまざまな効果

 「ユニット型植物工場」は屋内でも植物の栽培が可能な装置のこと。6畳程度のスペースがあれば、既存の建物にも大がかりな工事を行うことなく設置が可能。安心・安全にリーフレタスやパセリなどを栽培して販売する新しいタイプの農業として注目されている。天候に左右されないため収穫量が安定しているのも特徴だ。

 「最近、介護事業所では、利用者に対するケアのひとつとして園芸療法が盛んに行われていますが、特に、都心部の物件については、屋外に畑を確保するのは困難です。屋上や中庭などに小規模な菜園を設けているケースもありますが、屋外ですので悪天候の時や夏などは利用者が作業をするのは難しい面があります。それに対してユニット型植物工場でしたら完全屋内ですし、土や農薬も使いませんので安全で衛生的というメリットがあります」(NTTファシリティーズ農業ビジネス推進室新谷義男室長)

 千葉県市川市の特別支援学校では、このユニット型植物工場を設置。生徒自身が種まきから収穫、販売までを一貫して行うことで、作業訓練、将来の就労機会の創出、現金収入などに繋がっているという。同社では介護事業所についても利用者のリハビリ、就労の場や生きがい創出などに繋がると考えている。

 「観葉植物の代わりにロビーにおけば、入居者や職員、来客の目を楽しませるだけでなく、毎日成長していくことが『大きくなりましたね』『そろそろ収穫時期でしょうか』などの会話を生むきっかけとなり、館内のコミュニケーションが活発になるというメリットもあると思います」(新谷室長)。

 4月からスタートする工場は、医療法人が運営する高齢者施設にある外部利用も可能なレストランでの食材提供を主な目的に実施するもの。またユニット設置場所は廃業した温泉旅館であるため、遊休不動産の活用という点でも効果的だ。

 「ユニット型植物工場」の設置費用は約400万円。月々のコストは電気代などを中心に約3万円程度が目安。(3月12日号)高齢者住宅新聞