【2016年度診療報酬改定を語る】医療法人社団プラタナス桜新町アーバンクリニック・村上典由事務長

 2016年度診療報酬改定で在宅医療において重度者への対応が今後ますます重要になってくる。2018年度のダブル改定に向けて在宅医療の行く末を医療法人社団プラタナス桜新町アーバンクリニック(東京都世田谷区)の村上典由事務長に聞いた。

 前回の診療報酬改定では同一建物における管理料が4分の1に下がった影響が非常に大きかったと思います。

 当クリニックは居宅と施設ともに重症・個別対応の患者がメインだったので、そこまで報酬改定の影響は受けませんでした。しかし、近隣では廃業したクリニックもあります。管理料が4分の1になることで、外来とさほど収益が変わらなくなり、24時間体制を整えることは割に合わないと感じるクリニックが出たのだと思います。

 そして何よりも今後、在宅医療を志す医師が少なくなってしまうことを危惧しています。

 一方、7対1病棟の算定要件に「在宅復帰率」が新設されたことを評価します。これにより、病院から在宅に復帰させようという働きが大きくなり、退院も今までよりも早い段階で実現されるようになり始めたことを現場で感じています。

月1回の管理料 地方医療に光明

 2016年度診療報酬改定では、月1回の訪問診療で管理料が算定できるようになります。医師と話している中では、安定した患者であれば月に1回で十分という層は一定数あります。これを加味するとこれまでの月2回の訪問が過剰医療にあたる患者も多かったのではないでしょうか。ただし、24時間の管理においては、医師の負担は増えますので、そこを考慮した点数設定を希望します。

 医師数が不足している地方では月1回しか訪問できずに、管理料を算定できていなかった医療機関が非常に多いです。同じ質の在宅医療を提供しているこれらのクリニックが評価されることは良いことだと思います。

重症度の評価 当然の流れか

 医療依存度の高い患者に対する夜間のコール数や往診回数などを考えると、医療資源の投入量は軽症患者より多いです。そのため、重症度で点数に差をつけることは当然の流れといえます。

 ただ、残念なのが、精神疾患が考慮されていないことです。日本は諸外国と比較して精神病院の数が多すぎます。また、在院日数も長いです。今後は精神病院の患者を在宅に帰していこうという流れの中で、精神病院の点数は厳しくなりますが、在宅における精神疾患の診察が評価されてないため、退院先の受け皿が無い状態です。

在宅専門診療所 開設要件で納得

 在宅医療専門の医療機関ができるにあたり、これまで「軽症患者のみの診察」や、「地域との繋がり」、「災害時などの緊急対応」などが危惧されていました。

 そうした中、次期診療報酬改定では、在宅医療専門は認められますが、「地域医師会との協力」や「緊急時を含め、随時連絡に応じる体制を整えていること」などが開設要件に入っています。これにより、前述の危惧事項をカバーできるため、良い条件設定だと評価します。

 また、次期診療報酬改定で読み取れる在支診の取るべきスタンスは、組織化された在宅医療で看取りを含めた緩和ケアに注力することです。



(2016年2月17日号)高齢者住宅新聞