【番外編 高齢者虐待問題〜私はこう考える〜】8割強が「虐待あるかも」 高住連アンケート結果より

 高齢者住宅運営事業者団体などからなる、高齢者住まい事業者団体連合会(高住連)は、先月「虐待防止の取り組みに関する報告」を発表した。今回は、番外編としてこの内容を紹介する。

過去1年以内に研修実施は7割

 高住連が、昨年10月5日に虐待防止に向けた取り組みとして発表したのは(1)「虐待防止等のための強化ポイント」を高齢者住宅運営事業者へ発信(2)虐待防止のための職員向け研修資料などを、高住連構成4団体のホームページ上にアップ(3)経営層向け「虐待防止研修」を開催、の3点。

 このうち(3)は、昨年11月20日から12月21日にかけて全国8会場で実施。合計で2179人が参加した。参加者のうち構成団体の会員が1063人であったのに対し、非会員は1116人とそれを上回り、業界内での関心の高さを感じさせる結果となった。

 来場者アンケートの集計結果によると、参加者属性は「事業所管理者」が36・2%と最も多い。また「事業所事務長・リーダー等」は14・8%で、合計51・0%が事業所の管理者層。

 それに対し「本社代表・役員」「本社コンプライアンス担当」「本社研修担当」「エリア事業部長・エリアマネジャー・スーパーバイザー等」などの本社・本部側の人間は合計29・9%。

 虐待に関する現状認識については、13・0%が「(既に)起こっていると思う」と回答。「起こるかもしれない」は69・8%となっており、8割以上の事業所が「他人ごとではない」と認識している。

 また、過去1年間の研修実施状況については、何らかの形で実施していたのは69・6%。実施事業者のうち8割弱が「各事業所で職員向けに実施」と回答している。

人手不足深刻 教育が不十分

 虐待防止に取り組む上で、法人・事業所で困っていることを自由に記入してもらったところ、「人手不足による職員のストレス、疲労」「人手不足から(利用者からの要望に対し)『ちょっと待って』が当たり前になってしまっている。それが虐待のグレーゾーンであるならば、対応が難しい」「虐待につながるようなスタッフの言動について、それがベテランスタッフだと、他のスタッフが注意・指摘できない風土がある」「教育を現場レベルまで徹底させることが時間的に厳しい」など、人手不足や、それに伴いスタッフの教育・研修が十分に行えないといった意見が多く寄せられた。



(2016年2月17日号)高齢者住宅新聞