〜2016年度診療報酬改定を語る〜「後進育成できるか 懸念」 つつみCL(佐賀県鳥栖市)堤光太郎院長

 2年前の改定と比較して、今回の改定内容について在宅医からの反発の声が少ないのは、前回の改定で感覚が麻痺してしまっているからだと思います。そのために、医師並びに各施設管理者の賛同者を募って嘆願書を提出することに決めました。

 当クリニックでは、改定内容を踏まえ、4月からの収益のシミュレーションをしたところ、月に400万円の減収になります。クリニックでこの規模の減収では運営が危ぶまれます。また、このままでは周りでも閉院に追い込まれる医療機関が増えてくるでしょう。

 新設のサービス付き高齢者向け住宅であれば軽度者が多いと思いますが、当クリニックが担当している施設入居者は要介護3以上の重症な患者が50%を超えています。

 そもそも患者数で点数を分けるのはおかしいと感じています。同じ診療内容で診療報酬が異なることは不平等だと思います。外来診療でこれまでに患者数で点数が減算になったことはあるのでしょうか。
人手不足の現場外来診療は困難

 施設への訪問診療の方が効率が良いのは分かりますが、自宅と差をつける場合は施設の点数を下げるのではなく、自宅の点数を上げるべきではないでしょうか。

 実際、自宅に戻れないため施設に入居している高齢者は多いです。そうした人達が適切な医療を受けられずに孤立してしまうことを懸念しています。ただでさえ人手が足りない介護現場では、職員の人手を割いての外来受診は現実的ではありません。
 そのため、施設でも自宅でも生活できない高齢者が出てきてしまい、その人達が療養病棟にしか行き場がないという、時代と逆行してしまう結果になる恐れがあります。

 このままでは在宅医療を志す後進が育たないことを危惧しています。なぜなら24時間拘束されて1人の訪問診療患者を増やすより、外来患者を4人増やした方が収益は同等で夜間対応も不要であり時間的拘束もないからです。現在の在宅医が無理をして訪問診療をしていることを厚労省はもっと感じ取って欲しいです。



(2016年3月9日号)高齢者住宅新聞