「同一建物」診療報酬激減 訪問サービスに打撃

【高齢者の介護・医療ニュース】

 第272回中央社会保険医療協議会中医協)総会が2月12日に開催され、厚生労働大臣の諮問に対し、診療報酬点数の改定案を答申した。具体的基準や要件、報酬単価が出そろった形で、今後3月上旬に告示・通知、4月1日より施行される。今回の改定では、施設向けの訪問診療において「同一建物」の項目が新設されたが、従来より報酬が大幅に引き下げられたかたちとなり関係事業者に波紋が広がった。

 「同一建物」の項目が新設された背景には、医療費の引き下げとともに、在宅医療の不適切事例(通称、患者紹介ビジネス)是正の課題がある。いわゆる囲い込みで、診療報酬の過大請求、フリーアクセスの制限につながる恐れがある。そのため、在宅時医学総合管理料(在医総管)などについて、同一建物における同一日の複数訪問時の点数を設け、診療報酬の引き下げに踏み切った。

 在医総管とは、居宅で療養を行い、月2回以上継続して訪問診療を行った場合に算定できるものだ。在宅療養支援診療所・病院(在支診・病)などが算定可能。今回の改定では、居宅は従来と同じく5000点であるのに対し、例えば同一建物において処方せんの交付を受ける場合は1200点となる。つまり、施設向けに訪問診療を行っていた場合、従来と比較すると4分の1以下の減収となる。特定施設入居時等医学総合管理料も同様の措置がとられる。

 また同一建物における在宅患者訪問診療料は特定施設が203点それ以外は103点と点数が半減する。

 一方訪問看護については、2人目までは同一建物以外と同じ点数を算定するが、3人目以上は1人目から同一建物の点数を算定。総じて点数の上乗せを行っている。

 医療法人社団悠翔会佐々木淳理事長は、「訪問は居宅が中心で、影響は限定的。ただ在医総管における同一建物報酬が従来の約4分の1になれば経営的にぎりぎりになる。相当件数を詰め込まなければならず、1件ごとの診療の質が下がるのは必至。入居者や患者にしわ寄せが行き、不利益を被ることになるだろう」と指摘する。

 施設向けに訪問診療を提供するある事業者は「訪問事業を運営する事業者は利益が落ち込み、経営が厳しくなる。善良な医療機関の経営までもが苦しくなり、施設の訪問サービスから撤退する。在宅医療の首を絞めかねない」と危惧する。

 この件に関して厚生労働省は、「あくまで中医協委員の議論の中で決められたことであり、点数に関する意図や決定の背景については一切答えられない」としている。(2月19日号)高齢者住宅新聞