「訪問診療減額」緩和措置

【高齢者の介護・医療ニュース】

 厚生労働省は、今回の診療報酬改定で盛り込まれた、同一建物居住者に対する在医総管・特医総管の大幅減額について、「月2回の訪問のうち、1回を『同一建物以外』とすれば減額を行わない」ことを決めた。3月5日に行われた診療報酬改定に関する説明会で明らかにした。また、算定には患者の同意が必要との見解を示した。今後Q&Aの作成などを行い医療機関や高齢者施設などに理解を求めていく考えだ。

独歩可能な場合 算定は不可能

 今回の改定では、在医総管・特医総管の算定要件について細かく規定された。月2回以上訪問診療料を算定した場合(往診は含まない)、そのうち1回(1回目でも2回目でも可)が「同一建物居住者に対し1日2人以上訪問しない」という条件を満たせば「同一建物以外」の点数が適用される。また患者や家族等の同意を得た上での訪問でないと算定できない。

 加えて「継続的な診療が必要のないもの」「独歩可能など、家族や介助者の助けを借りずに通院できる場合」には、算定できないとしている。

 なお、訪問診療を行っておらず外来診療が可能な患者には地域包括診療加算または地域包括診療料の算定が可能。

 例えば、1つの建物で10人の利用者がいた場合、1回目の訪問が「1日1人」であれば2回目は1日で10人を訪問しても減額されない管理料の算定が可能となる、ただし1回目・2回目ともに「1日に同一建物2人以上」の訪問を行った場合には、減額された管理料となる。

 なお、これにはいくつかの例外規定がある。例えば、同一世帯の夫婦で、ともに訪問診療の対象の場合、減額の対象とはならない。また末期がんの利用者、急を要する往診については、訪問しても「同一建物で1日2人以上」の対象としてカウントされない。

国会でも問題視「当事者は混乱」

 今回の在医総管・特医総管の減額は、国会でも議論の対象となった。

 2月24日には衆議院予算委員会で、公明党の高木美智代議員が「突然の大幅な引き下げに事業者は戸惑っている」と発言、2月26日の衆議院予算委員会第5分科会では日本維新の会の松田学議員が「住民のニーズに応じた、志の高い医師の生活が成り立たなくなる。不正事例は摘発するべきだが、もう少し配慮が必要だ」と問題視した。

 これらの発言に対し、田村憲久厚労相は「医療機関からの紹介手数料の支払いなどの問題行為があるとの報道もあり、中医協で議論してきた。本当に医療が必要な人に医療が届かないというのは大変な話であり、今後見直しも含めて検討する」と発言していた。

 今回は、こうした反対・疑問の声に対して、厚労省側が緩和措置を設けた形になった。しかし一度発表した点数を変えることはできないため制度設計の不備を露呈し、取り繕った感は否めない。かえってわかりにくい仕組みになってしまった。(3月12日号)高齢者住宅新聞